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2007-11-04

私的ライナーノーツ"はじまりはじまる"

Maru2

まる六のCDが発売されて10日ほど経過した。
CDのプロモーションも兼ねて色んなライブが今後も予定されている。
昨夜はまる六のメンバーのおひとりであるおけいさんの秋の定期ライブが行われた。残念ながら参加することはできなかったが,多分,公式には発売後初のメンバーがお揃いになったライブが行われたのであろう。これについては別の機会に。

さて,幸いなことにこのCDには特にライナーノーツはセルフを含めて記されていない。同時にこのCD自体がライブのセットリストのような構成だから,ドサクサ紛れにたくみなりのライナーノーツを書いてみることにした。大した知識もなく記載するのは気がひけるが,まあ自分のサイト内のことだし,間違いがあればどなたか書込みを頂けると勝手な思いでしたためることにしよう。(随分,前置が長い!これ自体無駄が多すぎると猛省)

後,少し付け加えさせて頂くと(もう少しの我慢です!),ライナーノーツ自体は良く知る評論家なりが解説文的に書く事が多いけど,あるいはセルフとして自ら語るものというものだが,ここでは,このCDの体裁に合わせてライブのMC代わりに記載するのが妥当なアプローチのような気がする。と言うことで"ライブのMCセルフ風ライナーノーツ"ということで始めたいと思う。

Maru

まるで六文銭のように
まるで六文銭のように-まる六。この風変わりな名前のユニットでCDを出すという話を聞いた時,少なからず戸惑いを感じたのは事実である。CDと言いながら,それはレコード=記録を残すということであり,ある面,まる六の存在とは無縁なものとは思っていた。

無論,商行為という観点で言えば,より多くのファンにもっと気軽にその魅力を伝えるということは重要であり,価値あるものではあるが,まる六の魅力の大半はそのユニットの構成員である,小室等,及川恒平,四角佳子(敬称略,以後同様)が個々の活動とは別に,気が向いて尚かつ必要な時にだけ集まって自らのハーモニーなり呼吸を楽しむこと(正に音楽として),そしてそんな楽しんでいるユニットが醸し出す空気を体感することにあると考えていたので,果たしてCDと言う音源のみを記録することにどれだけの意味があるのかと考えてしまっていた。

つまり,まる六の楽しみ方の根源は,その空気/呼吸感を感じられる空間にいること,居られることが重要なのだと思う。無論"生"に勝るものはないのが当然のこととして,それをも越えてまる六の場合はアコースティックギター2本で生身の小室さん,恒平さん,おけいさんがその日の体調なり声の出及びオーディエンスの反応をも捉えて微妙なその日だけのバージョンとして演奏される訳で,その場にいることでしか伝わらない魅力がある。

更に言えば,まる六という名称自体,第8期の六文銭の一部ということで名付けられたのだが,メンバー自体の入れ替わりの多かった六文銭のこと,新六文銭なる名称があったくらいだから,小室等がメンバーの一員であれば"六文銭"と名乗ったところで何ら問題がなかったはず。それをあえて"まる六"としたところにこのユニットの想いがあると感じていた次第だ。何より,CDを待ち望む多くのファンにとっては"六文銭"復活の方が,インパクトがあったと思う。そうしなかった所が小室さんなり,及川さんらしさであり,それにシンパシーを感じる所以でもある。

何やらCD自体の存在を否定しているような表現になってしまっているが,決してそういうことではなく,まる六らしさとは何かの確認としてご理解頂ければと思う。何より,このCD自体がこうした懸念を如何に払拭するかまで考えられたものである点も重要なことだと思う。

さて,このCD"はじまりはじまる"は,CDとしては異例の18曲収録,通常ライブが20曲前後であるので,正にライブのセットリストのような構成である。まる六のライブは恒平さんが構成を考えると言うが,このCDについても同様だろうか?ただ,"はじまりはじまる"というタイトルは明らかに小室さんの想いではあるので,やはりクレジットどおり共同で考えたと見るのが妥当であろう。

そして納められた18曲の構成は大きく分けて3つに分類される。まず六文銭時代に創作されたもの,まる六として歌われたもの,そして小室さんなり恒平さんなりがソロとして歌われていたものをまる六のレパートリーとしたものである。いずれにしてもすべてまる六としてのアレンジにされているので分類自体が意味がないのだが,まる六はコーラスグループではないので,この分類に応じてのリードボーカルを取ることになる。

1曲目はタイトルでもある"はじまりはじまる"。最近の小室さんのライフワークのひとつでもある佐々木幹郎さんの詩に小室さんが曲をつけたものだ。佐々木さんは詩人であると同時に中原中也の研究者でもあり,いかにも現代詩という谷川さんとは趣きの違う佐々木さんの詩は,陳腐ではあるがまる六にフィットしていると思う。

そして2曲目は"あめのことば"。まる六最初のオリジナル曲。恒平さんの詞に小室さんが曲をつけた。ある面,まる六としては記念碑的な曲でもある。久しぶりの共同作業という点,歌唱をおけいさんを中心に考えたということで若干の手探り感がある。その時点でのレベルをお互い探り合う感じが興味深い。

そして3曲目。中原中也の"サーカス"。まる六には欠かせない曲のひとつだ。多分,ソロでは表現の難しい,まる六のハーモニーがあってその魅力が伝わる曲だと思う。

4曲目は"樽をころがせ"。どちらかと言えば小室さんの曲(佐々木さんの詩)。サントリー美術館のオープンに合わせて創作されたものだ。実際には鼓や琴を想定された曲ではあるが,CDでは恒平さんが鼓かわりの太鼓をたたいて演奏している。

続いては"ただあたたかくカラッポに"。これもまる六オリジナル。実は六文銭時代を含めて,おけいさんのために創った曲がなかった。その意味では及川/小室コンビで創った最初のおけいさんの為の曲となる。まる六定番の雨と違い,おけいさんらしい"晴れ"のイメージがあるやさしい曲だ。

そして定番というか,おけいさんが六文銭に参加するずっと前からの曲。別役戯曲スパイ物語の劇中歌でもある"雨が空から降れば"。これについては説明不要。因みにCDには収録されていない"へのへのものじのあかちゃん"は同じ戯曲内の曲である。

7曲目は"おしっこ"。これも小室さんの曲。まる六よりは,谷川賢作さんとソロで歌うケースが多いと思う。ベトナム戦争時の反戦歌である"死んだ男の残したものは"を創ったと言うか,小室さんとはいくつかのLPも創っている詩人,谷川俊太郎さんが,今の時代に対する反戦歌として創った歌だ。戦士そのもににスポットをあてた前曲に対し,子供や犬までも取り込んだ詩は,バーチャルで尚かつ誰もがかかわる戦争である点では軽い曲調と異なりより恐怖感が増していると思う。

8曲目から3曲は恒平さんの曲が続く"引き潮""戦場はさみしい""雨が降りそうだな"。"引き潮"以外はまる六のライブではじめて聞いた曲ばかりだが,正に恒平ワールドという感じの曲でソロに合った曲のような気がする。

11曲目はこれも佐々木さんの詩に小室さんが曲をつけた"石と死者"。原詩は不明だが,小室さんが創作する過程で言葉の並び替え等を行ったそうである。まる六で演奏されるそれは歌というより創作劇というか詩を題材にした音楽劇のように聴くものを引きつける。まる六の3名によるセッションという感じが魅力の曲である。

12曲目は六文銭時代の曲"面影橋から"。恒平さんがソロになってからも歌い続けた曲でもある。作詞は田中伸彦さんと恒平さんの共作とのことだが,田中氏の情報がなく,詳細は不明。

13曲目"私はスパイ"。これは6曲目の"雨が空から降れば"と同様,別役戯曲の"スパイ物語"内の劇中歌。詞の内容云々より歌として作品として評価する必要がある。つまり劇中歌なのでこの歌だけでの評価は困難だと思う。但し歌唱というか曲としての完成度はまる六ならではと言える。

続いて"その声は"。これは小室さんの歌。佐々木幹郎さんの詩に曲をのせるという小室さんならではの卓越した能力の曲だと思う。詩をそれ以上に響かせるのは小室さんの真骨頂というところか。

そして"夏・二人で"。第8期六文銭の名曲。テレビ等でクレジットがよく間違っているが作詞・曲も恒平さん作。あの神田川と同時代に書かれた曲と考えると,その先進性というか普遍性という意味でも興味深い。おけいさんと恒平さんのデュエットは35年前と変わる事無くその世界観を伝えてくれる。何よりおけいさん復活まで28年間封印されていた曲という意味でも,まる六としての復活が何よりうれしい曲のひとつである。

"街と飛行船"。色々な意味でこのCDに収録されたことは記念的な出来事である。何よりオリジナルで収録されたことはこの歌の変遷という意味でも興味深い。資料によると別役戯曲”街と飛行船"の劇中歌というか主題歌であるが,1970年に青俳で公演されたという以外に知識はないが,それ以上に1972年の芸術祭大賞受賞のラジオ番組"フォーシーズン"のテーマ曲という印象が強い。当時レコードでは発売禁止となったその詞がそのままNHKの電波に乗ったのを聞いた衝撃は忘れられない。何よりアコースティックでハーモニーだけで表現する躍動感のある曲は全六文銭の中でも一番の秀作だと思う。

17曲目は"無題"。1971年の小室等ファーストアルバムにも収録されていたもの。ソングメーカーとして偉大な小室さんの作詞というのも珍しい曲ではある。時期的にはゆいさん誕生の頃でもあり,小室さんの父親としての子守唄のような曲である。

そしていよいよ最後の曲は,"きみは誰かな"。作詞は糸田ともよさん。恒平さんのHPで写真家のかひさんと葉脈手帳を掲載されている。恒平さんと同郷の北海道在住の方だ。作詞家でもある恒平さんが認めた詩人の詩は恒平さんのやさしいヴィーカルで君は誰かなと,このCDにたどりついた我々に問いかける。

以上18曲。ライブであればアンコールとなるところだが,すべてを聞き終わった後に余韻を静かに感じている方がふさわしいと思う。これがまる六のファーストアルバム"はじまりはじまる"のすべてである。
やはり,ライブに勝るものはないという想いに代わりはないが,まる六のファーストアルバムとして,ある日のライブ,そのものを大事にしながら収録されたそれは,まる六らしいCD制作のアプローチとして十分評価できるしすべてとは言えないけれどライブ感は伝わっていると思った。いずれにしてもまる六が伝える35年の時空を越えた名曲を確認するだけでも,十分このCDを手にする理由はあると思う。

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さて当然といえば当然だが,小室さんや恒平さんの曲はあるものの,おけいさんオリジナルの曲はない。まる六だけでなくおけいさんを応援する身としては,贅沢だけど少しだけ物足りなさが残るのは何なのだろう。
OK's SQUARE 5th直後だからと言うわけではないが,またそのライブにまる六のお二人もシークレットゲストとして訪れていたと言うことであるのなら,是非,ソングメーカー,ボーカリストとして十分力量を身につけたおけいさんの曲をまる六ライブの中でも披露して頂きたいし,セカンドアルバムへの収録を是非願いたいと思った。
(当日披露されたという,おけいさんの新曲を是非どこかで楽しみたいと思う)。
前書も長いが全体も久しぶりの長文となってしまった。完読された方が見えたのなら感謝申し上げるとともにお疲れ様と申し上げたい。

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