悲劇のRD A301
最近の話題?はブルーレイ vs HD DVD 戦争の決着である。
興味ない方には頓珍漢かも知れないけれど、2011年問題前で未だに録画がビデオテープ中心の方には"何のこっちゃ"かも知れないけれど世のデジタルおたくにとっては大事な問題だった。
しかし、遥か昔のβ vs VHSのビデオテープ規格戦争に例えられるこの戦い、実はもう少し奥深い問題が隠されていた。休日のこの日、興味や知識のない方のために少し解説を加えることにしよう。
●すべては2011年問題
この戦いの根源には日本では2011年のテレビの地デジ化が影響している。
あえて日本ではと書いたのは日本の地デジ化はイコールCPRM化+映像規格のハイビジョン化(勿論、再放送素材は画質は従来どおりだけど信号のみハイビジョン化となる)になって個人であっても、これまでのように自由にテレビ番組を録画して友達に渡したりすることができなくなることになる。このあたりについては前の記事をご参照頂きたい。
●本質と異なる戦い
こうした背景の中、高画質ということは情報量が膨大ということになります。例えばビデオテープでも画質によって録画時間が違うのと同じことです。しかもハイビジョンとなるとその情報量は通常画質の何倍にもなるということです。よくハードディスクレコーダだと300GBとか600GBだかカタログに書かれていますが、これは録画記録するハードディスクの容量で、例えば300GBだとハイビジョン映像は39時間しか記録できないのに対し、通常画質だと最長532時間!も録画できる(実に13倍の情報量)くらいの差があります。
当然録画したものをハードディスク内に留めておけば問題ないのですが、これがいっぱいになると録画できなくなるのでDVDなどにダビング(CPRMだとムーブ)することになります。DVDは一般的には4.7GBなのでハイビジョン画質だと物理的に録画できるのは30分弱ということになる。ただ実質的には録画フォーマットが異なるので通常ハイビジョン放送は通常のDVDには録画することはできないが・・。そこで15GBや20GBのディスクが開発され同時に記録方式も新規のものが開発されたわけです。では何故この容量かと言えば、正に今回の戦いに終止符を打つきっかけとなったハリウッド映画の一般的な作品がハイビジョンで記録できる、つまり約2時間のハイビジョン記録ができる容量という訳です。
少しだけ解説するとこの開発には特許戦争でも有名な青色レーザ光線を使用します。HD DVDは既存のDVDと製造工程等で互換性の高い方式で低コストでの展開が可能ということで当初は価格面でアメリカでは優位に立っていました。容量は片面で1層15GB、2層で30GB、これに対しブルーレイはより短い波長で記録できるため片面1層で25GB、2層で50GBとより大きな容量です。
その上でノートパソコンやデジタル技術で定評のある東芝とNECが中心となって(これにあのマイクロソフトも加わって)HD DVDの推進をはかり、これに対しパナソニックやSONYを中心とする家電メーカーがブルーレイを推進する形でDVD以降の覇権争いを実施したという訳です。面白い?のはその昔、βとVHSで覇権を争ったパナソニック(松下)とSONYが手を組んだということでしょうか。しかし実際にはHD DVDがデジタルIT先進企業が推進し、ブルーレイが白もの家電Gが推進し、その戦いだったと言えるわけです。ああ、時代は変わった!
そして大市場のアメリカではテレビを録画して見るというより映画などのソフトを再生するためのDVDプレーヤーが中心(最早アメリカでは劇場で映画を見るよりDVDソフトとして大画面TVで見る方が主体というのも時代の流れではあります)で、ブルーレイとHD DVDの戦いもハードとしての善し悪しではなく、各映画会社がどちらの方式のディスクを使用したソフトを発売するかにかかっていたわけです。従ってこの戦いもどちらがより多くの映画配給会社を囲いこむかということになりました。
そして2月のあの日、HD DVDを支持していたアメリカNo.1のDVDソフト提供会社であるワーナーブラザースが一転ブルーレイ陣営に寝返ったため、その事業収益性に限界を感じた東芝(HD DVD推進の中心会社)が事業展開中止を決定したと言う訳です。
果たしてハードとしての優劣については正確には言えません。ただ、先ほどの事業主体の観点からみるとデジタル/IT陣営から見ればHD DVDにしろブルーレイにしろ記録媒体としてみれば過度的なものでしかないと思います。今や小指の先ほどのメモリーカードに何GBもの容量のものが普通となっています。あるいは書き出し/読み込み方式にしてもお皿をまわす大きな機構(ドライブ)がなくても端子に差し込むだけでデータの読み書きが可能になっています。つまりHD DVDにしろブルーレイにしろパソコンの世界ではいずれ無用の長物になることは明らかで、それに膨大なコストをかけたくないと思っても不思議ではありません。これに対しブルーレイ陣営のメーカーは家庭用の家電メーカーが中心でビデオテープやDVD/HDDレコーダに変わる商品としてある程度息の長い商品を目指していた訳で(しかも2011年問題で一気に買い替え需要が期待できる=日本独自の事情ですが)もともと意気込みに違いがあったのかもしれません。
●切り札だったRD A301
まあ、今となっては後の祭りですが、そんな戦争のさなか2007年12月に東芝はHD DVD対応の重要なモデルを発売しました。それがRD A301です。何が重要かと言うと、これまで書いてきたものをくつがえす機構が搭載されています。つまり、普通(但しCPRM対応ですが)のDVDにハイビジョン画質のままで約2時間の記録ができるHD Rec機構です。目から鱗のようにやれHD DVDだとかブルーレイだとが騒がなくても普通のDVDにハイビジョン画質で2時間記録できるのなら、それでいいじゃんということになります。(勿論、物理的には2時間ですが、多分満足できるレベルは1時間強かも知れませんが)何よりメディアが安いのが一番です。1枚100円以下のDVD-Rならある程度何でも残しておこうって思いますが、1枚1000円以上もするHD DVDやブルーレイディスクはいくら多く記録できると言ってもそうはいきません。かく言う私も本当はハイビジョン画質で記録したいのですが、コピーワンス(CPRM)とDVDの限界で画質を落として記録してきました。今考えるとせっかくハイビジョンでまる六の映像があったのに画質を落としてしまったというのは悔しくてしょうがありません。
ちょっと話がそれました。そうこのRD A301って当時のHD DVDレコーダのトップモデル(と言っても3種だけですが)として、HD DVDの切り札として登場したわけです。(因みにブルーレイ陣営ではパナソニックのDIGAのBWシリーズのみが方式は異なりますが普通のDVDに記録できます)更にはこのA301は東芝お得意のパソコンや同一LAN内の機器との連携が図れるレグザリンクなるものを備えており、セミプロユーザーにはとにかく触手が伸びる機種でした。
ところがです。あの撤退と同時にこのA301が全国の家電量販店の店頭からいっせいに姿を消してしまったのでした。店舗側が売れないから返品したのならともかく、聞くところによると東芝側が強制的に撤去したという話なのです。正直、ああこれで安くなったら買おうって思っていたのに・・。気がついたらどこにもありません。確かにHD DVDディスクの供給不安はありますが、はなからディスク目当てではなくHD Rec目当てだったのでそんなのは本当に"関係ねぇ"のに。この素早さの裏に何があるんだろうって思ってしまいます。
何よりその後の東芝側のリリースによるとブルーレイ対応機は今後も出す予定はないと言っています。つまり今後は永遠にHD Recは世に出ないということです。ネットに掲載されたこんな記事は我々ヘビーユーザーの共通の思いだったのに。
ご参考までに、こんなことを考えたのは私だけでないという証拠ですが、価格.comによると撤退直後価格が大幅にダウンしたA301がここのところ品薄ということで値段がどんどん上がっている。ヤフオクでも落札価格も上がっているという珍現象になっています。とにかく、勝ったはずのブルーレイよりも高い価格で取引されているっていうのって不思議ですよね。
東芝さん、どうです普通のDVD+HD Rec機構付きのHDDレコーダーをお安く発売したらどうですか?
※困難なのは解っています。HD RecってHD DVDあっての機構ですものね。解っちゃいるんですが・・・。
「ミタ・キイタ・カンガエタ」カテゴリの記事
- うたのちから CMのちから(2011.07.02)
- 恥の上塗り、ここに極まる。腐った天声人語(2010.10.17)
- まだ見て見ぬ振りですか?(2010.10.08)
- メディアの恥の上塗り 小沢強制起訴の恐ろしさ(2010.10.06)
- 黒のレギンス(2010.09.05)
この記事へのコメントは終了しました。

コメント