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2008-05-24

トップセールス 崩壊する販売店ビジネスモデル1

今、土曜の夜は"トップセールス"を見ている。

ドラマとなっているのは、林文子さんの半生記のようなものだけど、時代的にはまさに団塊の世代とリンクしているのだろうか?と言うことで私よりほんの少し前の世代(と言ってもたかだか数年だが)のカーセールスの現場がある程度リアルに描かれている。
NHK的な配慮としては、林さんはホンダのディーラーだったが、実際のドラマで扱われるクルマは日産車を中心に、トヨタ車が少々と全方位だ。今後BMWへ移っていくので昨夜からはSubという外車ディーラーと言うことでさすがにクルマは大半BMW車だった。
※林さんはBMW東京の社長として有名だった。

こうしたドラマが判りにくいのは、今回の舞台になっているのは自動車の販売店=ディーラーなのだが、ことクルマに関しては一般の人にはメーカーとディーラーの関係が判りにくいことだろう。ディーラーとはあくまで販売店なのでいいものを仕入れて売るというのが基本だけど、クルマに関しては販売店側に商品を選択する自由はない。実質的にメーカーが支配する体系が出来上がっている。こうした関係って所謂ブランド品の直営店に近いけれど、実質的には今やほとんどなくなってしまった単独メーカーのものを扱う街の電気屋さんチェーンストア(ナショナルのお店)みたいなものだ。
ドラマでは今後、外車ディーラーに舞台が移行するが、こちらはヤナセに代表されるようにディーラー自体がある程度独立した存在ではある。例えばヤナセはその昔VWの販売店だったが、VWがトヨタと販売権を結ぶなどヤナセの独占的な権利が脅かされるとみるや一夜にして当時のライバルであるオペルに衣替したことは記憶に新しい。本来、メーカーと販売店はこうした緊張感のある関係が望ましいと思う。そう、誰もがビッグカメラやヤマダ電気が松下だけのお店になることを望んでいないと思うのだけど。
その昔流通の革命児と言われた中内功率いるダイエーが松下製品を安売することで松下側が供給をストップさせたことがあったが(建前は自社製品の品質維持ということだったが、実態はメーカーとして、自社傘下の販売チェーン<所謂ナショナルのお店>の権益保護と同時に市場における自社製品の価格決定権を保持したいというメーカーvs系列に依存しない新興流通側=価格は市場が決めるという、の綱引きではあったのだが)、その結果は今や白もの家電は大型販売店で他社製品と見比べて購入するというのが当たり前だし、その価格たるや"オープンプライス"という市場価格ということで流通側の完全勝利となっている。

この一見当たり前の結論が、ことクルマに関しては全く機能していない。過去にはこのダイエーや三越もクルマ販売に乗り出したことがあったが、今ではすべて撤退している。その理由はいろいろあるが、端的に言うとクルマ販売が商売として成り立っていない=魅力がないこと、また最近の道路特定財源ではないが、クルマ廻りにはありとあらゆる限りの利権が絡みついていることだと思う。実はこの部分だけでも本が何冊も書けるほどの問題が山積みなのだが、ここに触れていると話が全く前に進まないので、それは別の機会に。

こうして所謂流通のプロがクルマ販売に携わらなかった=メーカーがそうさせなかったことにより、現状の日本のディーラーは極めて歪な会社となってしまっている。今回のドラマの主役であるセールスウーマン(これも今は他業種のコミッションセールスと区別する意味でカーライフアドバイザーや販売スタッフなんていう耳障りのいい言葉で修飾されてはいる)が、どんなにすばらしくても極めて限定的なクルマしか販売できない世界なのである。

建前としてお客様第一と言いながらも結局、自社扱いの商品の中で一番ニーズに近いクルマを売る事が良いセールスマンと言われる訳で本当の意味でお客のことを見ている訳ではない。そして何よりメーカー側は、自社製品しか売らせないにもかかわらず、その製品以外に有効な販促策を提供しない=提供できない(そう、彼らは物作りのプロかも知れないが流通、販売のプロではないのだ)。だから何十年も前から、メーカー側によって優秀として表彰されるトップセールスの大半はコツコツとお客様の情報を集め、昼夜違わずお客の要望に対応し,信頼を勝ち得ることでクルマを買って頂くという美談を推奨し続けている訳である。確かに物を売るということの基本ではあるけれど数万いる全国のカーセールスマン、ウーマンが同じことをできる訳がなく、結局できないことができるからトップセールスだと言うのには、あまりに知恵がないように思う。

何より、先述したように本当にお客のことを第一に考えるのなら、時には他社のクルマであっても勧めることができることが、本当のお客様第一主義だと思うのだが、その答えは今のスキーム下ではメーカーも販売店のトップ連中も提示することができない。
※日産、ホンダ、マツダなどではようやく全車種一販売会社で扱うようになった(あくまで売れない故の効率面からであり顧客視点とは言いがたいが)。しかしトップのトヨタでは相変わらずの4+1の5チャネル体制で、同じトヨタ車でもチャネル外の車種を扱うことはできない。

そしてもう一つの矛盾は、例えばまだ代替しなくても十分使用できるクルマであっても、新車に代替させることが一方で美徳とされていることである。無論、販売店として利潤を得るためには重要なことだが、片方で顧客の信頼を獲得しろと言いながら、その信頼を逆手に時には不必要な代替、増車を促進することがトップセールスの条件であるのも事実である。
※最近の一番ひどいCMはエコを理由に乗れるクルマを電球のように買替することを推奨しているT社のものがあるけれど、こんな下心ミエミエでそのくせいいことに見せかける(代替のために下取したクルマも中古車として売らないことには商売として成り立たないし、この辺りがメーカー視点でしか見ていない典型のように思う)のは提案した代理店も含め良識を疑わざるを得ない。

問題なのはこうした構造上の矛盾を実際には末端のセールスマン個人に背負わせていることだと思う。理想を言えば、色んなメーカーのクルマを取り扱う中で、顧客のニーズに1番ふさわしい車種を勧めるというのが正にカーライフアドバイザーだし、L店で言うところのコンシェルジュ、小売りの常道だと思うのだが、成果の大半が扱えるクルマの善し悪しで決まってしまうという販売店の現実ではトップセールスという言葉が空しく感じるのは私だけだろうか?

メーカーがこうした構造上の矛盾を維持するために使う手として新車至上主義という幻想がある。メーカーとしてはこの幻想を販売店に持ち続けてもらわないと困るのだが。この幻想を支えるのが販売奨励金という制度。昨今ではその分を販売マージンに上乗せするという方向性はあるようだが、市場の状況によってはキレイ事は言っていられないのも事実だ。実はこのことがクルマ販売そのものを消費者側から見た場合の不透明さを助長し、しいては販売店そのものに対する信頼感を阻害している要因なのだ。
※家電量販店の価格はオープンプライスと言いながらも少なくともお店単位での価格はほぼ統一されている。しかしクルマに関しては表示された価格は同一でも顧客によって価格が異なる、所謂ゴネ得が氾濫する世界なのだ。

以下はあくまで判りやすくした例で真実というものではないが、当らずとも遠からずということで見て欲しい。
ある販売店がメーカーとの契約で当月1000台の新車販売が必要だとしよう。
20日すぎどう頑張っても950台しか見込みが立たないとしたとき、メーカー側からどうしても1000台売って欲しい。1000台売れたら台当り5万円の販売奨励金を出すと言われたらどうなるだろうか?
単純計算で+50台で5000万収益が増えることになる。つまり1台あたり100万円だ。100万値引きを増やしてもトントンということになる。さすがに100万値引はないけれど、販売店本部から現場の店舗へとにかくあと50台、どうやってもいいので売れという指令が出る事になる。
さて、現場ではどうだろう。昨日までマネージャーから値引きは20万までと言われていたのに、突然、値引きはいくらでもいい、値引敗戦したHOT客,車検が近い顧客を回れと指示が出る訳である。しかし考えてみて欲しい、セールスマンの心情を。懇意にしている顧客からもっと値引きできないのか?という話をなんとか説得して購入して貰ったばかりなのに、人間関係なんて関係ない、値引き=誠意だと思っている所謂買い回り客に大きな値引きをしてクルマを売る心情を。クルマが売れたという喜びの影で、自分を信頼して購入してくれた顧客を裏切っているという心情を。
こんなことの繰り返しが結局,クルマの販売そのものに対する信頼感、しいてはセールスマンの会社に対する信頼感までも喪失させているという現実。結局,メーカーは自分達が作った製品をさばくだけの場所としか販売店を見ていない状況は販売店のビジネスモデルとそこに働く者の心も崩壊させていくわけである。

余談だが、日産の場合,昔は90%、今でも70%がメーカー直営販売店である。その経営がうまく行っているという話はほとんど聞かない。また、トヨタにおいても大半は地場資本であるが、一部あるメーカー直営販売店が順調であるという話も聞いたことがない。その理由は今更言うまでもないのだが、少なくともメーカー思考での販売店のビジネスモデルが成立していない何よりの証拠だと思う。

さて、あまり悲観的な話ばかりになってもしょうがないが、じゃこれからどうするかだけど、新しいビジネスモデルがないわけではない。クルマがステイタスシンボルでなく白もの家電と同様の道具として、保有から使用への発想の転換が図る事ができれば、新しい展望が開けるとは考えている。プランは一応持ってはいるけれどそれはまた次回に。

そして、ドラマのトップセールスに戻るとモデルの林さんはBMW東京の社長を経て、再建のためのダイエーの副会長となる。更には経済誌によれば、ゴーン率いる日産の執行役員になるそうである。しかもそれは本年7月の株主総会を経て,傘下の東京日産の社長就任前提のことだという。東京日産は東京都下でプリンス東京と並んで日産のビックディーラーではあるものの、メーカー資本の販売店でどこまで林流の経営手法が実践できるのかは、はなはだ疑問ではあるが(現状、東名阪の直営ディーラーは日産の常務クラスが出向/転籍という形で社長に就任しているが、現状うまく行っているという話は聞かない),そんな中でどこまで彼女にフリーハンドが許されるのか、不安と期待で眺めるしかないところだ。

いつか彼女の取り組みと私のプランとの比較なり、検証として新しい販売店のビジネスモデルが構築できれば、まだまだ将来の展望が無くなるわけではないが、単に話題性、お飾りとして据えられるだけだったり、メーカー思考で落ち込んだ収益を単価の高い車種で瞬間利益のみを追求する古いモデルで生き延びようとする愚だけはやめてほしいとは思う。

と言うことでこの話題については to be continue またいつかパート2を書かねばなるまい。


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コメント

wincさん

でいいですよねscissors
何よりこの長い長い駄文に目を通して頂き感謝です。
いろいろのしがらみから少し奥歯に物が詰まったような内容で
本人的には、もう少し突き抜けたいのですが・・

ま●かへ行かれたんですか?しかもたまり焼き!羨ましい。
でも一番利益率が低いメニューなんですね。
何やらガイドブックではハヤシライスのお店みたいに書かれていますが、たまり焼きを食べない客はもぐりです。本当に。
最近は息子さんが焼かれているようですが、
納屋橋の頃はまだ、小学生くらいだったかな?
ご両親の帰りを待ちわびて,時々お店を覗きにきていたのを
思い出します。・・歳がわかりますね。

また植物図鑑みたいはHP訪問させて頂きます。
ありがとうございます。


投稿: たくみ | 2008-05-29 22時09分

こんにちは。
「トップセールス」、毎週見ています。

パート2、是非、書いてくださいm(_ _)m

余談ですが・・きょう、ま○かに行ってきました。
もちろん、たまり焼きです(#^.^#)

投稿: winc | 2008-05-29 18時11分

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