OK's SQUARE 6Th 飛び立つおけいさん
書物や映像に取り込まれた過去を振り返るのでなく、
今、この瞬間にも活きているうたが好きだ。
しかしそれは、最近作られたからという意味ではない。
ただ、意味も,想いもなく商品を生産するがごとく打ち込み機械の中で、
詩や曲までも過去のいろんなフレーズの組み合わせで
消費される糞みたいな曲は作られる以前にすでに化石になっている
そして時代を超えることなく屍になった歌も数多くある。
その時代、確かに意味のあった歌であってもそれ以上の価値はないと思う。
無論、だからと言ってその時代の価値まで否定するつもりはないけれど。
そして人もまた、ただ屍のような歌を"懐かしい"という共通幻想だけで共感を
強要するような歌い手には魅力はない。
あくまで歌い手、歌手は何を歌っていたかではなく、何を歌ってきたか、何を歌っているのかがその歌い手の魅力だと思う。
誤解があるといけないので、断っておけば、これはあくまで私の歌、歌い手に対する評価軸であって、上記のようなものに共感する人、歌、そのものの記録や歴史自体を認めないというものではないし、無論否定するものではない。
さて、何故この小難しい話から入ったかと言えば、私にとってのまる六やその歌はまさに現在進行形、そして私自身も立ち止まり振り返ることなく、その歌の世界と今も歩み続けているという実感があるからである。
そして今日のテーマであるおけいさん。ご存知のように彼女は、1972年から一部の例外を除き、2000年、まる六として、ソロとして活動を再開するまでの28年間、歌の世界とは無縁であった。そしてその28年前さえも、六文銭としての1年間を除けば、極瞬間的にアイドル的なスポットをあびただけである。無論、評価されるのはその年数ではなく、内容ではあるのだけれど、あまりに疾風のごとく過ぎ去った六文銭時代にしても、すさまじいばかりの変遷を経ていたような気がする。あのまま、結婚や解散もなく続けていくことが、彼女にとって幸いだったのか、あるいはその結果としてやがて色んな庇護を離れ傷つき矢折れた状態でこの世界と決別していたのかは、今となってはだれにも判らない。
ただひとつ言えるとすれば、彼女は正に進歩/進化しつつあるその途上で、うたの世界とはまったく別の世界へ移行していたことだと思う。
そして2000年、あるきっかけでこの世界へ戻ってきたものの、彼女自身の進化の過程の時点にたどり着くまでには一定の時間が必要だったのは事実である。そして幸いにも、彼女はたどり着くまでの期間、まる六と言う世界の中で彼女にとっては自らの速度に自然に合わせることができる中で、(誰かに指示されたり、引き上げられたのではなく)28年前に自ら吹き消した進歩の導火線の端緒を美しく羽ばたく蝶がその準備をする蛹のようなまる六というユニットの中で過ごす間に、見つけていたのだと思う。
そう彼女の進化/進歩の道筋は"フォークの歌姫"という限定的な細い糸だけではなく、望むならもっともっと大きな広がりのある進路が広がっていたのだ。
実は、ソロとしてのおけいさんを2年近く見続けてきて、そんな想いがどんどん大きくなっていくのを感じていた。
主にOK's SQUAREで披露されるソロのおけいさんは、まる六とは異なる世界観を持っている。無論、旧六文銭時代の歌を歌うことはある、そしてまる六での歌もある。しかし歌われる歌は同じであっても、その世界は厳然と異なっているように思う。何よりそうした歌の比率は2〜3割程度で、六文銭時代には歌われなかった同時代の歌、アイルランド民謡や今やスタンダードとなっている海外の歌を日本語にして歌う歌、自らが作った歌、そして所謂おけいさんが好きな日本の歌が中心となる。
そして猫文銭とか、他のユニットとのジョイントでない限りは演奏&絶妙なコーラスを加えるのは、おけいさん自らが”相棒”と呼ぶ木村香真良さん。このコンビ正に相棒と呼ぶにふさわしいすばらしいハーモニーを奏でる。とくにおけいさんが遠慮もなく、それでいて頼り切っている香真良さんのギターはソロのおけいさんの魅力のバックグランドをしっかり支えているように思う。
考えてみるとデュオ、コンビならともかく、ソロヴォーカルの伴奏者としてギター1本という組み合わせはユニークと言えばユニーク。逆の意味で、伴奏者をギター1本に規定する理由がないわけで、ある面歌われる歌によってあらかじめユニットの構成を自由にできることを想定したかのようなユニットではある。だから、これまでもウッドベースが加わっても、その魅力は増すだけで香真良さんのコーラスやギターが色褪せることはない。更にいえば、おけいさんのヴォーカルが色んな組み合わせのユニットをどんどん魅力的に昇華していくパワーを持っているとも言える。
そして昨夜のSQUARE、聴きにいったLIVEで一聴惚れ?で加わった橋本しんさんを加えた後半の構成は、またまたおけいさんの新たな魅力、可能性を拡大させたように思う。おけいさんのすばらしさはバックが厚みを増せば増すだけ、ヴォーカルが押されるのではなく、更にそのパワーに厚みが増していくことだろう。
そう30数年前の曲だから懐かしいのではなく、28年振りに歌い始めたから遅いのでもなく、歌い手としての可能性と歌われる歌は今まさに生きている歌として伝えてくれるおけいさんに、再び脱帽の夜、
そして、これからおけいさんはどこまで飛び立っていくのだろうか?その先がどこであっても、許されるのならそれを支える一翼を担いたいと思う夜だった。
2008.6.21渋谷 『7Th Floor』19時15分スタート
<第一部>with ギター&コーラス 木村香真良さん
※黒の花柄のジャケットにジーンズのおけいさん
●昼下がりの夢・・コンフィデンスの歌、白石アリスさんの詞
●ただあたたかくカラッポに・・まる六のテーマソング
●サークルゲーム・・ジョニ・ミッチェルの歌
●傷ついた小鳥・・メラニーの歌(メモリアルはこへさん歌唱)
●ひとときの夢・・オリジナル
●はじまりはじまる・・まる六の歌
●あめのことば・・〃 (おけいさんメインヴォーカル)
●またね・・香真良さん作
●うれしくて・・オリジナル
<第二部>with ピアノ 橋本しんさん ギター&コーラス 木村香真良さん
※衣装替! 黒白ボーダーのカットソー&七分丈の黒のパンツ
●ホワンポウエルの街・・六文銭時代のおけいさん作の歌
●The Water is Wide・・アイルランド民謡
●I Need To Be In Love・・カーペンターズの曲、おけいさん訳詞
●へのへのもへじのあかちゃん・・スパイ物語の挿入歌
●(ピアノだけで)What a wonderful world・・サッチモの名曲
●ガラスの言葉・・おけいさんオリジナルソングの趣に
●星に願いを・・ピノキオの主題歌
●インドの街を象に乗って・・六文銭(おけいさんメインヴォーカル)
●(橋本さん退場でギターのみ)静かな雨・・オリジナル
<アンコール>
●春の風が吹いていたら・・伊庭啓子さんの名曲、タクミ流おけいさんの歌
●私の青空・・ジャズのスタンダード曲
初めての会場はゆったりとラウンジのような会場で、
贅沢な時間が流れていた。21時30分終了。
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コメント
テリーさん
こちらこそわざわざお立ち寄り頂き恐縮です
ご覧のようなディープなサイトですが、これからもよろしくお願いいたします
投稿: たくみ | 2008-06-24 12時39分
こんにちわ、
「アコースティックギター生涯の1本」のテリーです、
お立ち寄りいただきありがとうございます。
詳細なレポート感激です、
おけいさん、新境地を見つけた感じでしたね、
次はBassが入るかも!?ですよ^^)
リンクさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
投稿: テリー | 2008-06-24 07時18分