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2008-07-19

"春の風が吹いていたら" 探しものは何ですか?

季節は梅雨明けを待つばかりの7月
雲の切れ間からのぞく太陽はすっかり夏の勢いを準備していた
私は何か熱病に冒されたようにライブ行脚に明け暮れている

10代の頃の私はその想いとは別に何かをする、目の前にある現状から
一歩踏み出すことができなかった。
そのために無くしたもの、失ったものも多かった。

高2の時に恋をした
不思議な女の子だった
能面のように無表情な顔とシルクのように輝く黒髪
カモシカのような伸びやかな手足
でも、その瞳はいつも淋しそうな光を隠しているようだった
結局6年以上つきあっていても彼女の本当の笑顔を
心からの笑顔を見た記憶がない
そんな彼女と高校最後の日、そう卒業の日に
これからも会えるかな?と声をかけた
彼女の答はイエスだったが、正直あの日私が声をかけなければ
もう2度と会えないだろうと思っていた
でも彼女はそれはそれで仕方がないと思う子だった
私は予定通り?浪人をし、彼女も希望の大学には入れなかった
しかし彼女の親は浪人を許さず、結果誰でも入れる女子大に進学した
二人の通った高校からすれば、その大学は大学とは誰も思わない所だったが・・
浪人とその大学創立以来の秀才の淡い恋はそんな風にスタートした
二人は月に一度、会えるかどうか
時々手紙で心を通わせるだけの2年間が続いた
首席で短大を卒業した彼女は県の研究機関へ就職し
私はなんとなく大学生になっていた

それでも会えるのは月に一度、
時間を惜しむように美術館や映画を見てまわっていた
遊園地にもいったけれど
彼女を抱きしめることも手を握ることもしなかった
何故って?正直わからない。
でも彼女はそんなありきたりの対象ではない気がしていたし
何かあまりに繊細で脆く、それだけで壊れそうな感じがしていたのも
事実である。無論,私に単に勇気がなかったのかも知れないが・・

そして何年目かの彼女の誕生日を控えたある日
彼女からこんな相談を受けた
親からお見合いを勧められたんだけどどうだろうって?
私は貴方はどうなの?自分でしたいと思っているなら勉強だと思って
したらいいんじゃないのって
今、思えば酷い奴だよね。でも、その時の私はそんなことでも
彼女をしばっちゃいけないっていう想いの方が強かった
そして、その裏返しでそんなものは関係ないくらいに
二人は判り合えているという自信もあったんだと思う。
勿論、今ならそれでも相談をした彼女の心に想いをはせなかった
私の愚かさは十分判るけど。
あの時は言わなくても判っていると思ってた。
判っていてもちゃんと言うことが大事だと判るまでにはまだ私は幼すぎた。

そして運命のあの日、
彼女がお見合いをして、結婚することを突然告げられて
それでも会うことを約束したあの日
私は駅で彼女を待ち続けた。
彼女の街からやってくる電車をあと1台、あと1台だけと待ち続け
約束の時間から5時間後
電車を降りてくる彼女を迎えた

"まだ待っていると思った?"
"うん、絶対待っていると思った"
それから何時間一緒にいたのだろうか?
彼女の街へ帰る電車を見送ったあの日
この会話以外に何を話したのか全く覚えてはいない
あれから、30年近く
胸がきゅんとなる感触だけは続いているけど
彼女に会うことは一度もなかった

今、おけいさんのライブでこの歌を聴くたびに
そう、ソロのライブで歌われる"春の風が吹いていたら"は
セットリストに必ずと言っていいほど含まれている
後半に向かっておけいさんの歌声に更に力強さが加わっていくほどに
確かに私の心には春の風が吹いているのを感じている

多分、無くしたものが何だったのかを確かめるように
それでも見つからない答を探し求めるように
これからもおけいさんのライブを追いかけていく。

※以下はYou Tubeで見つけた多分オリジナルの"春の風が吹いていたら"。無論私の心はそれではなく、おけいさんが力強く歌うソロの方だけど。
http://jp.youtube.com/watch?v=8028BKeSi6s

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