まる六の日、地雷?仕掛け花火か?緊張感満載LIVE
SQUAREと違って晴れの確率が高い"まる六の日"。
前日の雨が本格的な寒さと共に連れてきたのは冬晴れだった。いつもより1時間遅い高速バスはその行程の1/3近くを雪を頂いた富士山を眺めながら東京へ向かって行った。
毎年6月と12月に開催される"まる六の日"、今回は特別なまる六の日でもあった。そう、9月に倉敷でお披露目されたゆいさんを加えた4名でのまる六で迎える"まる六の日"なのだ。その後、京都でも4名のまる六は披露されたけど、東京では初の4名まる六である。
多くのオーディエンスにとって、ゆいさんの存在は3名のまる六時代から何ら違和感のない存在だから、ゆいさんが加わったとしても何かが変わるという不安はない。それよりも今日のまる六、期待という意味での新しさを自分の目で確認したいというものだと思う。
小室さんは1年前のまる六の日の様子を撮影したmusic tideのインタビューでまる六の音楽のことをバイパスのない音作りとお話されていた。まる六の音作りに完成はなく、常に新しい試みと、その場その場で常に変化している一種の危うさと微妙な緊張感が、まる六の魅力のひとつである。
無論、私を始めオーディエンスの大半はクリエイティブなアーティストではない。しかし、その対極にあるまる六のパフォーマンスも同時に、そんなオーディエンスの存在抜きに成立しないものであるのも厳然たる事実だと思う。まる六の凄さは、そんなオーディエンスですら、虜にする、あるいはその日その日のオーディエンスの呼吸までも自らのパフォーマンスの一部にしてしまう奥行きの深さだと思うのだけど。
それは決してオーディエンスに迎合するのではなく、かと言って判る奴だけ判ればいいんだという青臭い独りよがりのパフォーマンスでもない、いろんなオーディエンスといろんな形で一体化できる(いい意味での裏切りと啓蒙の繰り返しのような)凄さだと考えているのだが・・
ゴメンナサイ。少し意味不明になってしまった。いろいろあるんです、私だってね。
さて、肝心の4人のまる六。開演時間を何となく過ぎたざわつく会場にすう〜っと登場して調律していると見せかけて?突然のように"サーカスゲーム"が始まった。そう、我々オーディエンスは早くもまる六の仕掛けた地雷を踏むように拍手をする暇さえ与えられず、その世界へ導かれていく。
早くも今日の仕掛けは始まっている。そもそもサーカスゲームがセットリストの1曲目なのか、それとも"12月のうた"からがスタートなのかさえ判らぬままプログラムは進んでいく。
4名のまる六は、小室さん、こへさんという両巨頭を挟む形で、ゆいさんが小室さん側、おけいさんはこへさん側というさもありなんという立ち位置だった。しかし、両サイドは固定ながらもゆいさんとおけいさんの位置は曲毎で変化するようだ。
"雨が降りそうだな"に続いて"あめのことば"とまる六の定番曲が、ユニゾンのようなおけいさんとゆいさんのヴォーカルが厚みをました感じで進んでいく。
少し間があって、4人のまる六としての曲。というかゆいさんフューチャーという感じのさがゆきさんの曲、ゆいさんお得意のジャギーな感じで"ほんとさ"が始まる。そして、まさにまる六らしく?スタートとしてすぐにストップ。小室さんとゆいさんが顔を見合わせ再スタート。軽快な曲は確かに、まる六の新しい側面なのかも知れない。
続いてはこへさんの"君は誰かな"。ここでこへさんワールド全開の後、4名ならではのハーモニーで"おしっこ"続いていく。再びこへワールドへ引き戻すべく"戦場はさみしい"へ。ここでは女性ツインヴォーカルは一歩引く形で、こへんさんと小室さんのバトルヴォーカル、戦争を扱った歌で繰り広げられる。
ここで初めてゆいさんがご挨拶。
ゆいさん自身も地雷原へ足を踏み入れた戸惑いと面白さを感じてみえるのだろう。そんな話の終わりを待つまでもなく" 引き潮"へ。小室さんとこへさんの綱引きのように、まさに引き潮と満ち潮のようにライブは続いていく。
前半最後の曲は"樽をころがせ"。最後の詩の解釈は、たしか前年のまる六でおけいさんに確認されていたような気が。問題?の〜今宵の月はただここに♪はおけいさんの透き通るようなハイトーンで、
しばし休息へ
後半は意外な曲でスタート。
衣装も変わって"キングサーモンのいる島"。以前KNOBでおけいさんのソロで久しぶりに聴いた名曲だが、小室さんもまさかやるとはとおっしゃっていたが、こちらもまさかまる六でといううれしい驚きの選曲である。こへさんの転調へのびやかに続く声を3人のハーモニーで包んで聴けるなんて。
続いては同じLPから"夏・二人で"。〜暑い夏の盛り場を♪ではじまるこの曲、なぜかネット上では<夏の暑い盛り場を〜>で検索ワードが飛び交っている。不思議な現象が続いている(詳しくはこちら)。日本語は難しいけど暑い夏はあるけど暑い盛り場ってなんだよって思ってしまう。せっかくのいい曲なんだから、正しく検索しろよって思ってしまう。
次はまる六としての新曲。こへさん作詞でウォンウィンツァンという中国姓の方の作曲とのこと。こへさんが30年近く前からソロで歌われていた曲だそうだが、まるで姉妹のようにユニゾンで歌われるおけいさんとゆいさんの
爽やかなヴォーカルがステキな"木の椅子"。
本日の企画という感じでスパイ物語関連の3曲を。
定番の"スパイ物語"、"雨が空から降れば"の2曲に続いて、別役さんが戯曲を書き上げる前に書かれていた詩に小室さんが曲をつけた"髭の生えたスパイ"。当時からハイスクールライフという雑誌上でいろんな詩人の詩に曲をつけていたもののひとつとのこと。その意味でも記念碑的な意味がある曲なのかも知れない。また、戯曲としての"スパイ物語"自体がこの曲をモチーフとして創作されたと言われるので、六文銭としても大事な曲ということになる。詩の一部はスパイ物語と同じだが、初めて聴く不思議な感覚にさせる曲だった。
ここで小室さんがもし死んだらこへさんに歌って欲しいと言って始まった曲"いのちかえす日"。もちろん、こへさんも自分が先に死んだら小室さんに歌って欲しいとエールの交換も忘れていなかった。
再びさがゆきさんの曲"大きなグミの木の下で"同じようにゆいさんフューチャーで。
後半最後の曲にはスペシャルゲストとして倉敷で競演した関口さんがチェロで加わって"サーカス"を。ジャンルを越えたまる六故、合わないものはないようにすばらしいチェロのパフォーマンスがしっかりシンクロしていた。
当然のようにおきたアンコール。1曲目に流れてきたのはあの曲、ところがリードヴォーカルをおけいさんが取ると全く別の曲のように響いてきた。その曲とは"出発の歌"、こへさんによれば出発しない爽やかな感じの新鮮なアレンジだった。そして最後の最後は、これこそハーモニーに厚みが増して迫力がました"街と飛行船"。
ありきたりの表現だけどあっと言う間の2時間だった。オーディエンスはゆいさん同様に広大な地雷原に足を踏み入れたまま、新しい年を迎えることになった。
新しい年も、果てしない完成への領域に向かってまる六の世界が続いていく。ただ、まる六としての魅力は別次元のものとして、やはり、個としてのアーティストそれぞれのパワーがあってこそのまる六だと思う。
そして我々オーディエンスはその日のまる六が、表現を越えた核融合のようなパワーに圧倒されるのか、果たして強烈な核分裂に弾き飛ばされてしまうのか、いずれにしても緊張のまま地雷原を進んでいくことになるのだろう。
最後におけいさんの切りすぎたというヘアスタイルは、おけいさんを更にすてきにするアクセサリーでしかなかった。
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