もう一度 まる六〜六文銭'09のあいだ。
いろんなアニバーサリーが重なったこの日、
らしいと言えばらしい、それでも何らかの熱気で雪の予報を雨に変えてその日がやってきました。
8年間慣れ親しんだ、何よりその成り立ちからは"まるで"と"ように"に囲まれたそれは、28年前とは違うものであることをある面誇っているように思えました。あるいは歌舞伎の大看板のように、そしてフォークというサブカルチャーにおいては伝説でもあった"六文銭"という名跡に敬意を表しているかのように名乗っているようにも思えます。
そんなまる六"まるで六文銭のように"が唐突に重い衣を脱ぎ捨てるが如く、"六文銭'09"として再出発することが2月14日のフォークライブのステージ上で宣言されたのです。同時に小室さんによるまる六総括のようなメッセージも紹介されたのです。
傍目から見れば、"まるで"と"ように"を纏った方がよりゆるやかなユニットに思えるのですが、そう"六文銭"だけを名乗る方がより重いものを背負うように感じられるのです。
ですから"六文銭’09"となることは、まる六の方々がようやくその名跡を名乗る段階に達した、否その決心をしたのではないかと思うのです。そのユニット内での想いについては前回に語っているのでここでは割愛しますが、その違いはオーディエンスの胸の中にそれぞれ思えばいいのかも知れません。
いやはや再び理屈の迷宮に迷いこみそうな感じです。
それでは本論に。
今回の会場は大森駅のすぐ側、"ピピ&コット"の一員として活躍された金谷あつしさんがオーナーの"風に吹かれて"。
先ほどのビッグニュースの直後であること、何より六文銭'09としての初CDの録音直後、更にはおけいさんのお誕生日とも重なって7時を回った会場は立錐の余地もないほど満員の盛況でした。
オーディエンスは名称の変更より、新CDに収録された新しい曲の披露を期待しているのかも知れません。
定刻より少し遅れて、まずお三方がステージ上に。そうこへさんはまだ私の横でお話の真っ最中。そしてこへさんもステージに上がったものの譜面が見つからず、その間を埋めるように小室さんが即興で一節。
そう、4人になってまるでABBAのような編成になってもこのユニットが4つの独立した個によって構成されている事実に変わりはありません。
"はじまりはじまる"で静かにスタートしたライブ、前半はまる六サイドのようにまる六としての8年間、更にそこから遡る28年前を辿るように演奏が続きます。そこに流れるハーモニーにはお酒好きの皆さんに合わせるならば熟成が進んだ蒸留酒の如く、まろやかにそれでいて厚みが増して、何より昨日より今日、そして明日に繋がるように今だ進化の過程にあることに驚きを隠せません。
"あめのことば""夏・二人で"そして"ただあたたかくカラッポに"聞き慣れた曲がおけいさんをメインとしたヴォーカルで続いていく。小室さんが書かれたようにまる六の8年間を支えたおけいさんに総括を託しているようにも思えます。
"引き潮"そして圧巻の"街と飛行船"。この日、まる六として聞いたこの曲の中で最高の完成度のように思えました。そうあの日に聞いた時の感激に繋がるように、偶然なのか前日ゆいさんは初めて"フォーシーズン"を聞かれたそうだ。そのすばらしさに思わず夜中に小室さんにTELされたそうだ。私にとってもこの"フォーシーズン"こそ38年にも及ぶ六文銭、まる六そしておけいさんに続く原点のような番組でした。当時リアルタイムで聴き、そしてカセットに録音して、今ではiPodにデジタルとして保管してある宝物です。
ご存知でない方に少し説明すると、NHKのディレクター氏がとあるライブハウスで当時の=おけいさんが在籍した最後の六文銭による街と飛行船に出会い、そこから1年間(小室さんですら20代!)このグループ、そう出発の歌からやがて解体に向かう姿をドキュメンタリーとして追いかけたもの、ステレオによる叙事詩ということで芸術祭大賞を受賞した番組です。ういういしい二十歳のおけいさんやさもありなんという感じのこへさんが生の言葉で語りかけていました。考えてみてもください。当時18歳の私が30年数年後、そのままのお二人に出会えた感激を。何せゆいさんは生まれたばかりの赤ちゃんでした。
まる六サイドの終盤は"戦場はさみしい""おしっこ"ラストは"サーカス"でした。
休息開けはいよいよ六文銭'09サイド。
実はこの'09は音(オン)には出てきません。だから来年六文銭’10になっても六文銭のまま、まるで進化の足跡のように六文銭の進化の過程のマイルストーンの意味だけだそうです。
それでもスタートは、そしてまる六としては初かも知れない"キングサーモンのいる島"からです。そしてこへさんのつぶやきなのに何故か小室さんのメインヴォーカルで"流星花火"12月の六の日に続いてフォードアウトするハーモニーが絶品です。
いよいよ問題の曲に。おけいさんが参加される前から歌われている問題作"ゲンシバクダンのうた"当時の発売禁止歌です。核アレルギー、しかも70年前後の時代背景、得体の知れない若者達が西武百貨店や忠犬ハチ公を原子爆弾でぶっ飛ばす歌なんて発売禁止になるのが当たり前と言えば当り前です。
ところがこの歌が新しいCDに収録されているのだそうです。その経緯は判りませんが、正直なところ街と飛行船が完全な形で収録された感激に比べると、果たして六文銭'09の歌としてふさわしいのか否か・・
小室さんは冗談まじりに放送禁止歌になる方が話題になるからとおっしゃっていたけど、あの時代のいろんな意味での象徴をぶっ飛ばすことがエネルギーであったのに、今の時代は現実の方が遥かに常識はずれのありえないことが次々に起こることを考えるとぶっ飛ばす対象が違うように感じられ、当時感じたアナーキーさは残念ながら今の時代には通用しない気がした。街と飛行船は心の中、精神のタブーさに切り込んだ歌であった故、十分に今の時代にもインパクトがあると考えるのだけれど・・(これあくまで個人の感想なのでそこの所、よろしくです)
因みにこの日も中津川でこの歌を歌ったメンバーのおひとりであるイルカさんこと若松さんがお出でになっており、小室さんから紹介されていました。
その後、同じく新しいCDに収録されている中原中也の”宿酔"そして宮沢賢治の詩にこへさんが曲をつけた"雲の信号"と続いていきます。
そしてこの日の愁眉,おけいさんがソロのように歌う”いっしょに帰ろう"。糸田さんの詩におけいさんが歌うことを前提にこへさんが曲をつけたとのこと。おけいさんの澄んだヴォーカルがやさしく包んでくれる歌です。
続いてゆいさんがメインで歌う、さがゆきさんの"大きなグミの木の上で"。ゆいさんお得意のジャギーで軽快な曲。
再び六文銭の原点のような"ひげのはえたスパイ"。スパイ物語の元歌的な曲でこへさんによる紹介によれば、小室さんが詩人や演劇人とのコラボで曲をどんどん創っていった"ハイスクールライフ"の中で発表されたものだそうです。
そして"いのちかえす日"。
そしてこれもCD収録曲で、パンフを見て思わずびっくりの"12階建のバス"。小室さんの中でも特異な方の曲だと思っていたけど、何故かこのユニットで完全に昇華されていたのは驚きです。ついでに言えばこの歌とも関係の深い柳田ヒロさんも会場にお見えになっていました。
実はこれが本編最後の曲でした。当然のアンコールは当然のように?"出発の歌".実は12月の六の日に体験済みですが、おけいさんの旅立たないメインヴォーカルが新たな魅力(個人的にはこれなら許せる?と思っていましたが)に感じていましたが、何故かこの日はおけいさんのメインヴォーカルに変わりはないものの完全に旅だってしまっていました。ひょっとするとこの盛り上がりでまる六を旅出させたのかも知れませんね(笑)
ほんとのオーラスは"サーカスゲーム"こへさんのひっぱりにフーワフーワの大合唱で、まる六を見事に送り六文銭'09が本格的にスタートしたことを印象づけたライブが終了しました。
※ところで今日の衣装は白のブラウスに黒の八分丈のパンツ、相変わらずスタイリッシュです。
この日はもうひとつのアニバーサリー。
そうおけいさんの誕生日ということでいろんなプレゼントが溢れる中で、いつもと変わらぬ楽しい時間が過ぎていきました。
さあ、新しい六文銭はどんな足跡を残していくのだろう。依然として私の六文銭追っかけの旅は続いていきます。
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