春色のプリズム おけい's ナイト♪
ホワイトデーからもう何日たったのだろう?
本物の春の嵐が通り過ぎた翌日、私はおけいさんを迎えに名古屋駅にいた。
東京でも金曜の夜はそうとうな荒天だったそうな。
それでもおけいさんによると
名古屋に向かう新幹線からは綺麗な富士山が見えていたとのこと・・
おけいさんと初めてお話したのはいつだろう?
そんなことを考えていたら、頭の中で時空の扉が微かに開き始めた。
まだ高校生だった私は当時の時代の流れの中で自然にフォークソングに傾倒していた。しかし三つ子の魂とはよく言ったもので、廻りの連中とは何故か違い私を虜にしていたのは、当然のような関西フォークとも違い、そして歌謡曲のようなカレッジフォークとも違う、何とも言えない芸術的というと小室さんに怒られそうだけど、正にサブカルチャーという言葉がふさわしい六文銭だった。
勿論"出発の歌"以前。僅かに生の六文銭に触れるチャンスのあった高校の文化祭も、多勢に無勢で五つの赤い風船に押し切られていた。正直なところ、余りやる気の感じられないそのステージは、確かにフォークのヒット曲の数々が流れていたものの心躍ることはなかったように思う。
以来30数年、知る人ぞ知る六文銭は、世界歌謡祭を通じて万人の知る所となり、そしてまた如何にも六文銭のように、自ら知る人ぞ知る存在になることを望んでいるかのように"解体"して行き、私にとっての幻の六文銭は幻のままの存在になっていった・・私自身も、これも当然のように淡い恋や決して順調とは言えない人生を流されるままに送っていたのだけれど。
そんな中で過ぎて行った30数年の時の流れの中でも、私の中の六文銭という存在は消えることなく心のバックボーンのひとつとして一緒に時を重ねていたように思う。微かな情報の窓口としての小室さんを通じて、ドラマの主題歌やNEWSのテーマ音楽にその匂いを感じ、音楽夜話で語られる話、曲の中に六文銭を見ていたように思う。それを可能にさせたのは最後の六文銭の最後の1年を記録したドキュメンタリー"フォーシーズン"だった。
当時でも決して露出の多い訳ではなかった六文銭だけど、そこに描かれていた素の六文銭、等身大の姿に(何せ小室さんですら20代!)田舎で結局生の六文銭に触れることがなかった私に歌という存在を越えて、心の中に強烈に刻み込まれていったように思う。
※フォーシーズンの音源、小室さんのレコードと共に30数年間の宝物、3枚の六文銭のレコード。
1972年から2006年に至る邂逅についてはこれまで何度か書いたけれど、時空を越えたこんなステキな再会、一度も会ってもいないのに再会なんておかしいけれど、30数年の想いを詰め込んだそれは、おけいさんを通じての自分自身への再会だったのだと思う。
それからの3年間、30数年分の心のパズルを埋めるようにまる六やおけいさんのライブに通い続けた。共通点と言えば、その間にながれた時間の量だけなのに、同じ時代、同じ空間を共有できていた喜びとその瞬間、瞬間で感じた想いに通じるものを見つけられた喜びは何事にも変えることのできないものだった。
まる六でハーモニーの核としてその存在感を聴く度に増していくおけいさん、そしてソロとしてすべてをおけい色に染めてその世界に引き込んでいく姿に触れる度に、この世界観は普遍的なもの、限られたオーディエンスのためだけのものではないと、生意気にも背負っているもの、その重さの違いも顧みず、想いはどんどんつのっていくようになった。
この素晴らしさを伝えるお手伝いはできないものだろうか?
気がつくとそんなことを考えていた。
それから半年余り、いろんなことがあり過ぎて、それでいてあっという間のことだった。
そして今、そのおけいさんを名古屋へ迎えようとしている。
名古屋の会場に選んだのは今池のパラダイスカフェ21。
会場選びについてはできるだけ多くの方に、それでいてゆったりとおけいさんの世界に浸って頂ける場所をと考えた。そして、できることならフォークファンだけでなく、おけいさんを知らない人に聴きにきて頂きたいと。
ただ一番大切なことは、おけいさん自身に楽しく、気持ちよく歌って頂けること。気に入って頂けるといいのだけれど・・・
※ギターの古橋さんとは3回目となるステージ、コンビネーションを確認するようにリハーサルが進行していく。
さあ、いよいよ開場。心配されたお天気も昼からはすっかり雨もあがり、これなら遠くからお出でのお客様も大丈夫と胸を撫で下ろす。6時半を過ぎて、すでに会場はほぼ一杯に、そして開演近くには満席となっていた。
定刻を少し過ぎて、いよいよ初めてのおけい's ナイトがスタート。
プルオーバーの白いブラウスにスリムな黒のパンツ、相変わらずのスタイリッシュなおけいさん。
"へのへのもへじのあかちゃん""雨が空から降れば"そして"ネコのうた"の3曲からおけいワールドが広がっていく。
別役戯曲の世界からというある面高度な入り方。更に"木の椅子"そして"病める果実"と、おけいさんを知らないオーディエンスに怯むことなく、歌の世界へ引き込んでいく。確かに知っている歌は緊張を緩ませる効果はあるものの、あえてそうでない曲で、ヴォーカリストとしてのパワーで勝負を挑んでいるかのように。
詩の力、曲の力、歌唱の力で存在感を高めながら、透き通るような声とジャギーな一晃さんのギターで春の名古屋の夜は更けていった。
"傷ついた小鳥"に続いておけいさんが初めて作曲した"ホワンポウエルの街"そしてある面六文銭時代のソロフィーチャーとしての代表的な"この大空に捨ててしまおう"と可愛らしさと力強さ、いろんな表情の歌をおけいさんは歌い続けていく。
こうして歌っていられるシアワセを自ら歌にした"うれしくて"で前半を終了した。もはやこの時点でおけいさんを知らなかったオーディエンスもこの歌姫の魅力を理解しているようだった。
後半は"幻"のまる六、はじまりはじまるから3曲。
"はじまりはじまる""あめのことば"そしておけいさんのための曲でもある"ただあたたかくカラッポに"。
おけいさんもおっしゃっていたけれど、ユニットこそ変わらないものの"まる六"という存在が無くなるのに寂しさを禁じ得ない。ある意味まる六は一番長く続いた"六文銭"の形のひとつだから。
ここでオリジナルの"かざぐるま"。テンポの早い曲の後は少し休息をって笑いを誘いながら、ここで六文銭'09の新しいCDの紹介をされた。前半に歌われた"木の椅子"を除けば唯一フューチャーされた曲は糸田さん作詞の"一緒に帰ろう"。その詩の世界観をおけいさんのすべてをやさしく包み込むヴォーカルで表現されている。
ここで今回のハイライト。一晃さんが徐にハーモニカスタンドを肩に掛ける、おけいさん曰くフォーク少年みたいな出で立ちに、ハーモニカのイントロが始まると思わず客席から歓声が・・おけい流"ガラスの言葉"。
ここで一端下げたギターのキーを戻すため所謂ひとつのチューニング。おけいさんは六文銭時代の7時間にも及ぶミーティングの話でフォロー。
いよいよエンディングに向かってラストスパートへ。会場にはすでに春の風が吹き抜ける準備はととのっているように感じられた。
"What a Wonderful World"をしっとりとそして最近のオリジナル、後半への盛り上がりで突き抜けていく"静かな雨"。静から動へ、この季節に聴ける喜びの"春の風が吹いていたら"で、おけい's ナイトのエンディングを迎えていた。
当然のように起こったアンコールに応えて
"インドの街を象にのって"そして最近のおけいさんのお気に入り"私の青空"でこの日のすべてのメニューを終了した。
春の風に揺れて陽光がプリズムのような煌めきでいろんな色に光り輝くように、この日集まったオーディエンスの心をおけいさんがまきおこした春の風がやさしくなでていったように感じていた。
春の夜のおけい's ナイト。
未熟な運営を最高のパフォーマンスでカバー頂いたおけいさんにまずは感謝を。そしてこの日同じ空間を共有してくれたすべてのオーディエンスにお礼をしなくては。
できることなら、次のおけい's ナイトで
おけいさんにもそしてオーディエンスにも今夜よりも更に素敵な時間を楽しんで頂けるようにしたいと思う。
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コメント
ルゥさん
遠くからお出で頂きありがとうございます。
1週間前がずっと昔のようであり、でもつい昨日のような
変な感覚が続いています(^-^;
今度は浜松からのツアーでも企画しましょうか?
冗談です(;ω;)とても体も気力も持ちませんね。
次回・・これからもよろしくお願いいたします♪
投稿: たくみ | 2009-03-22 23時58分
たくみさん、お疲れでした。
また、あの日が、鮮明に甦ってきました。
今回も一番前で、何曲か、一緒に歌わせて頂きました。
また、企画して下さいね。
4月9日は、おとぎ草子、猫ライブです。
これからも、おけいさんレポ、ヨロシクお願いします~
投稿: ルゥ | 2009-03-22 23時32分
村崎さん
先日はお出で頂きありがとうございました!
初めてお顔と名前が一致して安心しました。
おけいさんの魅力はもっと多くの方に知って頂きたいと
思っていたので、そんな風に言われるとホッとします(*^-^)
是非、おけいさんにもお伝え頂ければと思います。
私が言っても、いつものことなので真実味がないので・・(゚ー゚;
投稿: たくみ | 2009-03-21 16時05分
ちょうど1週間経って私も色々思い起こしていました。
たくみさん、お疲れさま。ありがとうございました。
いわゆるフォークファンでないひと、おけいさんを知らない人も
十分に楽しまれたのではないでしょうか。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 村崎 | 2009-03-21 13時03分
ムーミンパパさん
こちらこそ、大変お世話になりました。
さすがに翌日レポアップと言う訳にはいきませんでした(^-^;
元々の裏方人生、黒子向きの性格ですが
まだまだ修行が足りないみたいで、
皆さんに迷惑をおかけしたみたいです(ρ_;)
2回目いつになるかわかりませんが
よろしくお願いいたします。
投稿: たくみ | 2009-03-21 09時54分
おはようございます。
早いもので一週間、如何お過ごしですか?。
その節は色々お世話になり有り難うございました。
タクミさんのレポはオーディエンスとしてライブへ参加した
時のレポとして今まで拝読していたので、今回のライブ、接客
、応対etcとただ座っている訳にはいきませんでしょうし、
どのようにいつデータをとってどのように取り纏められるのか、
内心ハラハラ(実は興味津々・・・?)していたのですが、今
拝読して改めて敬意を表する次第です。
器用で、知識有って、センスが有るんですねきっと。羨ましい
限りです。
これからもタクミレポ楽しみにしています。もちろん可能な限り
ライブへも出掛けますけどね、宜しくお願いします。
投稿: ムーミンパパ | 2009-03-21 09時18分