FJの意味、そして歌姫としての自覚。
2009年8月1日、まだ梅雨も明けぬ中津川、椛の湖畔では30数年前と同じ笠木透さんを中心とするメンバーにてフォークジャンボリーが開催された。
FJと言えば、1970年にはゆいさんのお母さんでもある小室のり子さんがステージ上で飛び跳ねてみえた映像が記憶に新しい。そして71年にはその、のり子さんに変わり最後の六文銭に加わったおけいさんが参加している。その意味ではおけいさんにとっても縁の深いイベントでもある。
※左は19歳のおけいさん。当然かわいいが,正直今のおけいさんの方が遥かに魅力的だ。写真はFJ主催者のサイトにあったものを拝借しました。
無論、世の中の多くの方にとっては、その事実よりサブステージで歌いまくった男を時代の寵児にしたイベントとして記憶していると思うけど・・
そんな真夏のイベントに、今回はおけいさんはひとりである。
まあ、今更その意味をここで語ってもしようもないし、セレクトされたメンバーは濃いとも言えるし、それでも昨今のフォークブームと言われる中では地味な印象はぬぐえない。新聞では豪雨の中、1300名余のオーディエンスを集めたというが、果たしてその意義はどこまであったのだろう。笠木さんには申し訳ないが、基本的には個人的な好き嫌い、あるいは時代を超えた怨念だけは、40年の歳月を越えても解決しない、あるいは心の溝を深めていったものがあったのかも知れない。そう、少なくとも40年ぶり、21世紀のジャンボリーとしての意味付けは参加者の構成から読み取ることはできなかった。
無論、おけいさんにとっては同窓会的な意味合いもあって、多少なりとも精神的にリフレッシュできたのならよかったのかなあと思ってはいるけど。
さて、これはほんの前振り。今回はFJがテーマではない。
そんな同窓会に参加された翌日、おけいさんは中津川とは恵那山と対峙した長野県の飯田市で猫とのジョイントライブである。
紅白みたいに次々に数曲をつなぐFJと違って、おけいさんの歌をじっくり聴きたかったので雨が上がることを期待しながら、それでも恵那山トンネルが近づくと前日の豪雨もと思わせる大雨でクルマの前がまったく見えない状況だった。
会場のふぉのは飯田の駅前の近く。ビルの地下1階にあった。
猫の皆さんにとっては3回目の会場とのこと、おけいさんは無論初めての会場である。如何にもというお店の造り、地方のライブハウス特有の雰囲気がある。天の邪鬼な性格なのか、なんとなくみんなで昔を懐かしむというのは性に合わなくて、やや苦手な雰囲気でもある。
猫は逆にそんな雰囲気に合わせるのがお得意なのかも知れない。その意味では前半の猫のステージでオーディエンスは十二分に暖まっていた感じがする。
サプライズはてっきりいつもの常富さんのサポートかなっと思っていたら、おけいさんのソロの定番でもある一晃さんが参加されるとのこと。
猫とおけいさんはいつものクルマでの移動だから,高速を使えば中津川からは30分程度だけど、一晃さんはどうやって辿り着いたんだろう。少なくとも電車だけで乗り継ぐことは可能だけど、塩尻経由とか豊橋経由なんてとんでもなく大回りになる(一般的にはバスかクルマでの移動だろう)。
何はともあれ,一晃さんが見えることで"おけいさんのライブ”に来たという実感が一気に湧いてきた。
これまで知らない場所でのライブとなると、おけいさんも最初は手探りの感じがあるのだけれど、ひとりでFJのステージを努めあげたからなのか、はたまた待望のソロCDが発売されたからなのか、とにかくスタートから自信に満溢れ、馴染みの猫が暖めたオーディエンスを一気にご自分の世界へ引き込んでいた。
最初はあれだけ雨にたたられながらも"あめのことば"でまる六時代をおさらいし、六文銭'09としての代表曲となるかも知れない"一緒に帰ろう"、そしてソロとしてのライブで磨き上げたおけいワールドの集大成のような"しずかな雨"を名刺代わりに、なんとなくFJの流れで70年代のノスタルジーを暗にイメージしていたオーディエンスを完全にノックアウトしていた。
ここで一晃さんに加えて、常富さんがギターで加わる。
雰囲気は若者と爺のような二人の侍従を従えたお姫様の様。気遣いしすぎるくらいのおけいさんだけど、自らが先頭を走ることで、そのパワーで応えることが役目であることを自覚されたようだ。
ツインギターで歌うのはソロCDのタイトル曲でもある"初恋"。それにしても”しずかな雨”、”初恋"の2曲ってなんて難しい曲なんだろう。それをこともなげに歌うおけいさんは確実に新しいステージにステップアップされたようだ。
発売されたばかりのCDの話を織り交ぜながら、リップサービスにも余裕が伺える。常富さん作の"ささやかでも愛の歌"に続き、内山さん、石山さんも加わっておけいさんが作った"うれしくて"を。今日のフルバックになっても、いつもならオリジナルでも猫っぽい感じになるところを、すべてを従える形でおけい色に染まっているような気がした。
ここで一転、はじめて作った曲でもある"ホワンポウエルの街"は内山さんのパーカッションも加わって海寄りの街並のように響いてくる。なんとなくアレンジがユーミンっぽく感じたのは私だけだろうか?
そして、オーディエンスの余韻をくすぐるように"ガラスの言葉"と続く。
これまでの猫のジョイントだと、またここで猫のステージに戻るのだけど、もはや今日の主役の座はゆるがすことはできない。
CDではセルフカバーの"インドの街を象にのって"を。
そして今やおけいさんのライブでは欠かす事のできない歌、2007年の広島でのライブからだろうか?おけいさん自身も認めてみえたほんの僅かなためらいよりもこの歌の持つ世界観が再び歌い始めたおけいさんには何より必要だったような気がする。
初めて聞いた時は正直、胸が詰まる思いがあった。それを自ら歌うおけいさんの想いはどんなものだったのだろう。しかし回を重ねるごとに凛とした想いがどんどん響いてくるようになった。多分、その歌を昔の微かな四角佳子の記憶として懐かしさのシンボルとして聞くオーディエンスは驚愕するはずだ、それは今や完全におけいさんを代表する1曲と言える"春の風が吹いていたら"。
ただ、今日は少しゆったりした感じに・・まあ、たまにはいいかな(これはあくまで個人的な趣向なのでお許しを)。
おけいさんパートの最後の曲は"旅の途中"。その歌詞との直接の関係はないけれど、2000年に再び歌い始めたおけいさんも来年で10年を迎える。ソロとしての活動でも5年目となる。いろいろな節目を迎える前に、間違いなくあたらしい一歩を踏み出したおけいさんを感じさせる夜だった。
もちろん、遅れて来た歌姫としては未だ"旅の途中"であることに違いはない。これからもまたどんどん新境地を開拓するパワフルなおけいさんに出会えるに違いない。
定番のアンコールでは"出発の歌"、そして猫としての"海は恋してる"で飯田の夜は更けていった。
『若田さんお帰り』って出発の歌の中で叫ぶおけいさん。同時に最後までおけい色に染まった夜でもあった。
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