火の魚・・
NHKで『火の魚』を視た。
昨年度の芸術祭大賞受賞作品とのこと。1972年、最後の六文銭の1年間を追いかけた"フォーシーズン"も同じ芸術祭大賞受賞作品だった。加賀美アナの"ステレオによる叙事詩”というナレーションが昨日のように蘇ってくる。
無論、こちらはドラマ。大賞ではあるが53分程のドラマとしては短いものである。スペクタルも何もなしに本土(広島?)へは日に2便しかない小さな島で隠遁的な生活を過ごす老作家と、その作家の連載を担当する若き編集者との心理描写のような対話を中心に描かれる。それはまるで作り物の部分、贅肉を極限までそぎ落とすことによって見えてくるものこそ人を語り、命を表すことができると考えた渡辺あやの脚本が語っているようだ。
更にこのドラマに光を与えているのは、
老作家を演ずる原田芳雄と編集者の尾野真千子だ。原田芳雄さんは昔から大好きで、日活時代の藤田敏八監督、鈴木清順監督作品や龍馬暗殺でのユーモラスではあるがどこか刹那的な演技が魅力的だったが、もはや70になるのかな?素敵に歳を重ねているように思う。あの松田優作があこがれて真似たのは有名な話。(ついでに言うと彼の歌うリンゴ追分は秀逸だ)
実はその原田さんが主役と知って見たのだけれど、尾野真千子さんの凛とした演技もまたすばらしかった。どこか陰のある、それでいて芯の強さが伝わってくる、渡辺さんの脚本も尾野さんを想定して創られたと聞いている。彼女、どこかで・・ということで思い出した。クライマーズハイで特ダネを書こうと奮闘する女性記者役を演じていた。記者に編集者、それぞれ表面には出ない重い、重いものを背負っているものを演ずるのがうまいなあ~って思った。
久しぶりに見て得したと思うドラマだった。
編集者が、作家の命令で、島の子供に見せたひとりで演ずる影絵芝居、
魚拓を創るために命あるものを奪う瞬間に見せた涙
その後、たじろぐ作家の目の前で活き作りの鯛を食べ続ける姿
主役は女性編集者の方だったのかも知れない。
死を意識した時に襲う絶望的な孤独感
しかしその孤独感があるからこそ通じ合える心
作者はこれを刹那と呼ぶのだろうか?
戦う刹那、輝く刹那も悪くない。
原作は室生犀星。現代にアレンジして描かれていた。
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